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2010全日本学生ヨット個人選手権 展望 by 外道無量院

例年、この大会は蒲郡・海陽で開催されるが、今年は学生ヨット総決算の全日本学生ヨット選手権(全日本インカレ)が、その蒲郡・海陽開催という事で、個人選手権は福岡・小戸で9月3~5日に開催される。 ご存知の方も多いとは思うが、左手に見える糸島半島と、目の前に聳え立つ能古島に挟まれた水道から吹き込んで複雑に変化する風や、閉鎖的な海面に流込んでくる強くはないが複雑な潮流など、結構、クセのある水面で、総じて、地元勢、もしくは地元経験者が有利ではないか、というのが基本的・個人的な見解である。加えて、現在、沖縄付近にいる台風7号と、台湾付近で発生した台風8号がレース期間直前・中に接近する可能性もあり、今後の動きに注意が必要だ。また、「ボーナス得点方式」・「ディスカード無し」という、選手にとっては、最終レースのフィニッシュまで一瞬たりとも気を抜く隙がなく、最後まで大逆転もアリの得点方法が採用されている。

それでは、今年も各水域から有力な選手を拾って優勝候補の選手を展望してみる。











470級 

第一経済大~福岡経済大~日本経済大と、この4年間で3回も大学名を変えてきたが、ヨットに関しては全日本インカレで470級2連覇中、過去7度の出場中で5度の優勝、この個人選手権・470級に関しても、冨岡、宮川、飯束と異なるスキッパーで現在3連覇中と、不動・不変の三船・岡村コンビの指導体制に支えられ、「470級・クラス特化」で圧倒的な強さを見せる日本経済大勢は今年も健在である。九州個選では、1~4位と6位を独占。指導陣の母校である、名門・福岡大勢をシャットアウトし、創部史上最多の大量5艇を送り込んでくる。そういえば、古い話にはなるが、監督・三船和馬が、小松一憲(1976年モントリオール五輪470級代表、1977年470級世界選手権2位、現・アビームコンサルティング・コーチ)、甲斐幸(1979年470級世界選手権優勝)、高橋幸吉(現・浜名湖ジュニア代表、姉弟妹の3人で4度のIH制覇を果たした礼子、洸志、友海の父)、小笠原憲男(NTT)などの「群雄割拠」で熾烈を極めた激戦の選考シリーズを制し、470級日本代表に選ばれながらも、ソ連軍によるアフガン侵攻で、JOCが出場を取りやめた為に、「無念の幻」、となったモスクワ五輪開催から今年は丁度、30年目にあたる。

さて、優勝を狙える力を持つのは、昨年の王者・飯束潮吹(福岡第一・4年)を筆頭に、昨年4位の岡賢志(高松工芸・4年)、そして新人ながら昨年のインターハイ・チャンプとなるや、以後、直ぐに470に乗り換え、高校時代から全日本選手権、NT選考と出場し、大学生はおろか、社会人セーラーを相手にそこそこ健闘している土居一斗(福岡第一・1年)の3艇だろう。昨年と比較しても勝るとも劣らないメンバーを揃えて万全の構えだ。今年は地元の開催でもあり、「飯束2連覇」、もしくは狂っても「同大学勢の4連覇」は譲れないところ。特にエース・飯束は、7月にオランダ・スケベニンゲンで開催された世界選手権に学生選手で唯一出場。序盤でつまずき、シルバーフリートとはなったが、シリーズ後半はかなり良い走りを見せて健闘した。クルーの配置はまだ未定のようだが、大嶋龍介(東海二・4年)、内野航太(3年・長崎鶴洋)、そして飯束とともに世界選手権に出場した外薗潤平(鹿児島商・2年)と、経験、技術ともこちらも他チームに勝る陣容を整えている。迷い無く飯束艇を不動の大本命、岡、土居の2艇を有力候補に推させて頂く。

はたして、他大勢から、この強力な日本経済大勢を倒せる存在はいるのだろうか?

過去3年間、この日本経済大を全日本インカレで最終日・最終レースまでリードして死闘を繰り広げてきた関西学院大からは3艇が出場する。中でもエースで主将の小栗拓也(中村三陽・4年)は一段と成長し、クルーにもエース格の中野裕介(中村三陽・4年)を配して、強風シリーズとなった関西個選を準パーフェクトで圧勝した。市野/佐藤組以来、4年ぶりの同大学勢の制覇を狙う。他の2艇もインターハイFJ・国体SS2冠の笠井大樹(啓明学院・3年)、国体SS級チャンプの新人・西尾駿作(関学高等部・1年)と高校時代の実績では日本経済勢に勝るとも劣らない選手を揃えている。だが、ここまでの大学入学以降の「伸び」と、昨秋以降の「新人促成」としての取り組み方、クルーの錬度等を総合的に日本経済大勢と比較すると、今年に個選チャンプを狙えるのは小栗/中野組に限られるか?他、この水域代表は、「6艇枠」の中では最多の42艇参加の中からの勝ち抜けで、他に比べて競争率は抜群に高く、総じて質は高そうだ。女子ながら強風得意の大曲昭子(長崎工・4年)や、逆に軽風シリーズなら、昨年の牛窓・全日本インカレのオープニングレースでトップフォーンを鳴らして周囲を驚かせた後藤沙紀(別府青山・3年)の関大勢2艇も、「女子だから・・・」、と言ってけっして侮れない存在だろう。

90艇という予選最多参加水域の関東勢では、昨年・今年とコンビ固定で楽に関東個選を2連覇を達成した河合龍太郎(塾高・4年)/小川晋平(塾高・2年)組が飛びぬけた存在である。今年こそ、日本経済大勢、関西学院大勢の厚い壁を突き破り、学生チャンプとなってカップに名前を刻む事が出来るだろうか?今回が残された最期のチャンスだ。他、僚艇の飯野啓太(塾高・2年)、秋山玄(慶應藤沢・3年)も河合に引っ張られて大きく成長してはいるが、個選チャンプを狙うとなるとまだ、多少荷が重い気がする。ライバルの早稲田からは慶應を数では上回る4艇を送り込んでくる。中でも、横田敏一(中村三陽・3年)、西村元(清風・3年)、市川航平(早大学院・2年)のレギュラー3艇は有力視されるが、河合を除く慶應勢と同じで、上位は伺えても優勝まで狙うには、もう一歩力が足りないか?この中からは、高校時代を福岡で過ごし、海面の特徴を良く知る横田を筆頭候補としたい。名門・日大勢は、3、4艇の全出場艇がある程度の同じ力を持ってはいるのだが、まだ残念ながら個選チャンプを狙えるような「エース」が不在の印象。その他では、法政や明治のエースが共にスナイプに転向した事もあって、厳しい言い方をすれば、全体的に「小粒」な印象だ。強力な日本経済大を脅かせるような突出した存在が、慶應・河合以外には見当たらない、と言ったら言い過ぎだろうか?

全盛期に比べると弱小化した同志社大が、今期は復活を期してシーズン当初から積極的に遠征に出て強化に励む一方で、金沢大の隆盛や京産大、龍谷大の復活気配で、盛り上がりを期待していた近畿北陸水域だったのだが、実質最大勢力の立命館大の6月下旬からの活動自粛による不出場で、一挙に寂しくなってしまった。その上、個選、インカレと続いた水域大会の閉会式直後に、あってはならない事故が起きた事を残念に思う。立命館の活動自粛の原因もそうだが、指導者や最上級生には、チーム内の行動規範を徹底し、二度と同じような事故が起こらないように部員の指導を厳しくして欲しいものだ。さて、この水域の代表としては、名門同志社大に敬意を表して、エース格の中岡弘章(北嵯峨・4年)の名前を挙げさせて頂くが、個選チャンプ狙いとなると、現実的には厳しいか?期待の新人・奈良大樹(別府青山・1年)も、まだ、父親(近大OB)に敵わない程度。幾らかつて五輪を狙った名セイラーとは言え、こちらが個選チャンプを狙えるのは、その偉大な父親を超えた後であろう。


結論

◎・・・・・・・・・・飯束/外薗組(日本経済大)
〇・・・・・・・・・・河合/小川組(慶應義塾大)
▲・・・・・・・・・・小栗/中野組(関西学院大)
△・・・・・・・・・・岡/内野組(日本経済大)
△・・・・・・・・・・土居/原田組(日本経済大)
△・・・・・・・・・・横田/大矢組(早稲田大)
△・・・・・・・・・・中岡/幸野組(同志社大)
注・・・・・・・・・・後藤、大曲の関西大・女子スキッパー2艇

*クルーの組み合わせに関しては、代わる可能性アリ。



スナイプ級

全国的に主要校でレギュラースキッパーの470級からスナイプ級へのコンバートが目立つ。
その事も手伝って、470級とは違い、こちらはかなりの混戦模様だ。

昨年、女子スキッパーとして史上初の個選チャンプとなり、今回、2連覇に挑む早稲田の木内蓉子(湘南・4年)は、今年も有力候補の一人だ。昨年は、スナイプ級ジュニア(U22)世界選手権・準優勝の木山典彦(当時・関西大、現・楽天)が、そのジュニア世界選手権出場中に行われた関西個選不出場の為に、ここには出てこられなかった事に恵まれた感もあり、今年も勝ってすっきりとしたいところだろう。春先から初夏までは何故か不調だったものの、強風となった東日本スナイプで並み居る社会人、男子スキッパー勢を相手に堂々の5位・学生間トップとなるなど、夏を迎えて完全復活の兆し。しかし、皮肉なことに、僚艇の古谷信玄(福岡第一・4年)が、その偉業達成に立ちはだかる一番の強敵となりそうである。今季は、春先から卒業後を見越した活動で、主将ながらちょくちょくと部活を離れて複数回の海外遠征があり、帰国直後に練習不足で臨んだ関東個選ではあったが、それでも簡単に連覇して「格」の違いを見せつけた。加えて、今回は高校時代にさんざんに乗込んだ開催地・小戸の特徴は良く知るだけにこちらを「本命」とする。関東勢では他に、国見優太(塾高・4年)、小島朋之(サレジオ学院・4年)の慶應勢、野村一真(唐津西・3年)、森本光晴(中村三陽・4年)の法政勢、明治の坂上佑真(日比谷・4年)などが有力候補だが、この中では、やはり開催地で高校時代を過ごした法政・森本と、他水域のように「ディスカード無し」なら優勝の計算がたった明治・坂上の470からのコンバート組2艇を代表格として取り上げたい。名門・日大からは、関東個選を女子ペアで戦い抜き、日大勢トップで通過してきた長塚亜紗子(追浜・4年)/稲垣奈巳(海津明誠・3年)組の名前を筆頭に挙げさせて頂くが、現実に女子ペアでの個選優勝は厳しいだろう。女子ペア固定の本当の狙いは、ここから2週間後に行われる葉山開催の全日本女子インカレの方だと読む。

関西水域勢では、昨年の全日本インカレでスナイプ準優勝のライバル校・関西大勢を一蹴、全日個選への道をシャットアウトして創部史上初めて同一クラスに4艇を送り込んでくる関西学院大勢が有力。過去3年間、常に全国優勝を争って来た470勢に比較すると、チーム内比較でだいぶ劣る印象があったが、今年は様子が違う。中でも、新チーム結成直後から、蒲郡での強風対策として体力強化・体重増に着手、いまや70kgオーバーの筋骨隆々たる体を作り上げてエース格に成長し、強風の関西個選を準パーフェクトで制した西尾将志(関学高等部・3年)が筆頭格だ。加えて、卒業後は競艇選手を目指すという噂で、軽量維持ながらも、強風域でも上りは何とかしのぎ切り、絶対的な自信を持つフリーで抜き去るというレース・スタイルを確立した増川美帆(博多女子・4年)も有力。元々軽風域では定評がある上、クルーもエース格で地元出身の辻川亮太(中村三陽・3年)を配して万全な体制で臨む。この2艇は、流れに乗れれば優勝まで狙えるか?

近北水域からは、昨年の全日本インカレ予選落ちからの名門復活を目論む同志社大スナイプが、春先から夏休みにかけて何度も蒲郡や関東遠征を実施して強化してきた。他水域の学生だけでなく、有力社会人セーラーと積極的に対戦して経験を積んできたのだ。北野庸介(清風・4年)とこの春に470からコンバートされた西村秀樹(中村三陽・2年)は、遠征を重ねる度に成果をあげており、どこまでやれるかが楽しみだ。特に、琵琶湖スナイプで優勝した西村を、同大OBで、月刊・「舵」に定期コラム『ディンギィー乗ってる?』を連載中の井田光司が、『その安定したレース展開能力は、確実に学生レベルを飛び越えていました。今後のインカレや全日本スナイプで注目すべきチームの登場です。』、と自らのブログで大絶賛しているので、ここ数ヶ月だけで劇的な進歩を遂げたのであろう。ただ、私は、同志社大の度重なる関東遠征の「ホンネ」は、来年の全日本インカレの開催地・江の島対策と読む。本当の狙いは来年以降ではないだろうか?また、部員60名を超える全国最大規模を誇る金沢大勢も同志社大同様に3艇を送り込んでくる。全日本個選でどこまで通用するか?

九州水域からは、鹿屋体3艇、九州大2艇、福岡大1艇の出場。例年、豊富な練習量を背景に、この全日本個選スナイプでは、意外(失礼!)なヒーローを生んで来た名門・福岡大スナイプが、地元開催で僅かに1艇というのは如何にも寂しい。残る地元水域代表はすべて国立勢だ。常識的には今年、個選チャンプを地元から誕生させるのは少し難しくなった、という見方が一般的だろうが、昨年は「史上初めて」の女子スキッパー・チャンプが誕生したので、国立大勢からチャンピオンが出る事も「ゼロ」、とは言えず、少なくとも上位に食い込む艇が出てくる気配は充分である。

激戦の関西水域で神戸大と大阪大が各1艇、九州水域では前述のとおり5艇、近畿北陸からは金沢大が3艇と、常連の北海道大、東北大などの北日本の水域や、中部、中国、四国といった私大が少ない水域以外でも、このスナイプ級では全国的に国立勢の健闘が目立つ。実は関東でも、今年は「権利」を得られる14位以内に横浜国大勢の2艇が入ったのだが、部の都合で残念ながらこの全日本個選出場を辞退しているのだ。

今回は特に金沢大、九州大、鹿屋体大勢は、新艇かもしくはそれに近い状態の艇にエースを配し、少なくとも、国立大勢にとっては、「セレクション制度以上に重い」、と思えた「ハード面でのハンディキャップ」が、無くなりつつあるので期待をしたい。


結論

◎・・・・・・・・古谷/井阪組(早稲田大)
〇・・・・・・・・西尾/上田組(関西学院大)
▲・・・・・・・・木内/小林組(早稲田大)
△・・・・・・・・増川/辻川組(関西学院大)
△・・・・・・・・坂上/高野組(明治大)
△・・・・・・・・森本/鈴木組(法政大)
△・・・・・・・・西村/岡村組(同志社大)
△・・・・・・・・北野/杉原組(同志社大)
△・・・・・・・・国見/渡辺組(慶應義塾大)
△・・・・・・・・長塚/稲垣組(日大)
△・・・・・・・・小島/加藤組(慶應義塾大学)
注・・・・・・・・鹿屋体、金沢大、九州大、神戸大、大阪大の国立大勢。

*クルーについては、470同様に変更の可能性アリ。

スナイプに係わるトピックをひとつ。

ほんの数年前まで、実質上のオクムラ寡占が続いてきた国産艇スナイプ市場であったが、「学連スナイプ」導入以後、ここ数年は辻堂スナイプが関東勢を中心にジワジワと広がりを見せ、ついに今年は最南端の鹿屋体大にまで入るなど、全国規模でシェアを伸ばして、だいぶ様子がかわって来た。今年、全日本インカレ総合3連覇とスナイプ・クラス2連覇を目指す早稲田では、この夏に3艇目の辻堂スナイプが進水。レギュラー3艇を辻堂で揃えてこの全日本個選、そしてインカレに臨んでくる初のチームとなる。さすがにこの状況に危機感を持ったのか、今年はついに、オクムラも対抗処置を取り、デッキとマスト(コード名:侍)をモデルチェンジしたニュータイプを投入してきた。今回は、少なくとも関西学院大、日大、九州大がそのニューオクムラスナイプを投入し、辻堂スナイプの早稲田、慶應、明治、法政勢などと激突する見込みだ。昨年より一つステージが上がった感のある「ビルダー対決」にも注目してほしい。

以上、参加各位の健闘と幸運を祈る!!

合掌

外道無量院








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[ 2014/10/05 21:37 ] [ 編集 ]

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